IDEAFUL -ad from the world-

上海在住の広告クリエイターが、嫉妬に値する世界の広告やアイデアを長らく紹介し続けています。(2012年〜)

2018年カンヌを席巻!世界一のクリエーティブと評された「パラオ誓約」の凄さとは?

 

2018年のカンヌにおいて、

Titanium、Sustainable Development Goals(新設)、

そしてDirectと3部門でグランプリを獲得した、

「Palau Pledge(パラオ誓約)」は一体何が凄いのか?

その分析がてら記事を書いてみたいと思う。

 

言わずもがな、「Palau Pledege」とは、

世界で13番目に小さい観光大国パラオに入国する際、

次のようなスタンプを押してもらうというものだ。

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なんと書いてあるのか分からない方もいるかと思うので、

日本語の誓約も貼っておきますね。

 

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パラオの自然を汚さないことを誓い、

サインをさせることを促すものになっている。

もし違反が認められた場合は、

最大100万ドルの罰金の支払いを命じられる可能性がある。

 

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誓約の他にも、同トーンのクリエイティブで

ポスターやスタンプなどが幅広く展開されたようです。

 

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アメリカのケリー長官が署名している様子も発見できました。

世界レベルのインフルエンサーたちが、このプロジェクトに関わったようです。

 

施策の規模が大きく、シンプルでボールド。

まさにアワードにはぴったりな仕事だと感じるのですが、

ではカンヌのお偉いさんたちは、この作品をどう評価したのか。

彼らのコメントから、ポイントを探ってみようと思います。

 

"At the end of the day, we had one winner, an idea that really was the freshest and something we can scale and activate geographically around the world,"

 

「一日の最後に、優れた勝者とアイデアを見た。

それは、とてもフレッシュでいて、地球レベルでスケールできるものだ。」

 

Leo Burnett Worldwide Chairman and CEO

Mark Tutsell

 

"IIt changed minds of governments and made them do something sustainable. This felt like something we should be thinking about moving forward."

 

「このアイデアは政府の意識を変え、彼らに持続可能な行動を促した

これは私たちが前に進むためにすべきことを考えさせてくれる。」

 

" The Palau Project wasn't a charity campaign. Palau Project was a campaign that was business-driven as well as socially driven. "

 

「このパラオのプロジェクトが、単なるチャリティーではない。

社会ドリブンであり、ビジネスドリブンでもある。」

 

Wieden & Kennedy Global Co-Chief Creative Officer

Colleen Decourcy

 

 

このColleenさんの言葉がすべてのように思いました。

昨今はSocial Goodが叫ばれ、とはいえ

「ビジネスとして成立するものを」という

揺り戻しのような評価をする年もありました。

 

モラルなのか、ビジネスなのか。

アワードの場で永遠に課題であったこの問題に、

パラオ誓約はひとつの答えを世界に示したと思います。

 

局所的に優れたアイデアを実施し、

それを大きなものとして見せる”スキャム”とは一線を画しています。

政府を動かし、人々の行動を変えたこの仕事は、

私たちエージェンシーが目指すべき未来の行方を

少し教えてくれたような気がします。

 

遠い国の話であると、あきらめるのは簡単。

いかに自分の日々の仕事の中で、

社会や人々にとって意味のある仕事ができるか。

奇麗ごとではない本質的な仕事を求めて、

明日から頑張っていきたいと思います。

 

youtu.be

 

設置期間は、なんと12年!スウェーデンの木材保護塗料メーカーによる実証実験型広告

  • Company: Sioo:x
  • Agency: Stendahls
  • Country: Sweden

 

スウェーデンは、毎度広告の枠に収まらない

素敵なソリューション事例が多い国ですが、気になる情報が入ってきました。

 

クライアントの名は「Sioo:x」。地元の木材保護塗料ブランドのようです。

 

木材そのものの劣化を防ぎ、且つ印字した文字の色落ちをさせない

その確かな品質価値を伝えるために実証実験型の広告を設置しました。

 

その名も…

「This is the world's most boring billboard

(世界で最もつまらない屋外広告)

です。

 

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木でできた至ってシンプルな看板ですが、

これの一体、何がどうつまらないのでしょう?

 

この看板が設置されたのは、

「マルメ」というスウェーデンの最南端に位置する、

雨量が多く湿度の高い街です。

 

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ショッピングセンターの前に設置されたこのビルボードは、

なんと12年もの間、置かれたままにされるそうです。

 

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しかも、このビルボードに使われている木材は、

CEOのベランダから持ってきたもののようです。

なんて身を呈した実証実験なのでしょうか。

 

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「変わらない」ことを義務づけられたこの屋外看板は、

12年先もきっと同じ姿のまま存在し続けることでしょう。

 

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「世界で最もつまらない屋外広告」は、

「つまらない」存在であり続けることが、

「最高」の商品PRにつながる実証実験型広告なのでした。

 

下手な広告をやるよりも信憑性に足る、素晴らしい取り組みだと思いました。

「どんなCMにする?」から考える、日本の広告業界でも、

課題解決をファーストに、このようなユニークな広告を実現していきたいものです。

 

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無駄な長時間ミーティングに喝!DIESELが開発した、エクストリーム過ぎる会議室

  • Company: DIESEL
  • Agency: Publicis Italy
  • Country: Italy

 

無駄な長時間の会議は、世界中のビジネスマンたちの課題です。

 

アパレルブランドのDIESELは、そんな状態を解決すべく、

ひとつのアイコニックな会議室を新たに開発しました。

 

その名も…

「THE CAPSULEFor Successful Meetingsです。

 

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統計によると、会議の約50%は意味が無いそうです。

(なんとなく肌感覚的にもそうですよね)

 

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それを受けて、DIESELの研究員たちが立ち上がり、

エクストリームな会議室が 開発されました。

 

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文字通りカプセル型になっているその会議室は、

僅か15分しか滞在を許してもらえません。

 

終了時間が近づくに連れて、テーブルの傾斜がきつくなったり…

 

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強力なストームが吹き荒れて、紙も飛んでしまいますし、

もはや会議どころではありません。

 

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部屋のライトも激しく明滅し始め、カプセルの中はこんな感じ。

とても会議を続けられるような状況ではありません。

 

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目標の15分を過ぎるとこの有り様。

見事会議が終わった(?)という訳です。

 

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「なぜDIESELがこのようなことをする必要が?」

と思われる方もいつかと思うので、彼らのタグラインもご紹介しておきます。

 

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「FOR SUCCESSFUL LIVING」(成功に溢れた生活の為に)

だそうです。

 

今回の会議室のエグゼキューションは、

ファッションからはやや飛距離がありますが、

すべてはこのタグラインに基づいて考えられているはずです。

 

ちなみにこの会議室は、

実際にミラノの展示会などにも出品されたりするようです。

 

単発で終わってしまうのと勿体ないタイプの施策なので、

例えば日本なら「はたらき方改革」の流れに乗じてうまくPRするなど、

緻密なPR戦略と合わせ技で考えてみると良い気がしました。

 

「点の施策を面にする」という意識を持って、

このアイデアを参考にしてみるのはいかがでしょうか?

 

youtu.be

 

「”違い”は強さだ。」ダイバーシティの大切さを訴える、ALL BLACKSのレインボーブラックシャツ

  • Company: AIG
  • Agency: TBWA\HAKUHODO, Tokyo
  • Country: Japan

 

以前当ブログで、AIGオールブラックスを起用した

バイラルムービー「#TackleTheRisk」をご紹介させて頂きましたが、

それに続く、新キャンペーンを是非ご紹介したいと思います。

 

adfromtheworld.hatenablog.com

 

その名も…

#DiversityIsStrength(違いは強さだ。)

です。

 

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オールブラックスといえば、真っ黒なシャツで有名なのですが、

こちらのシャツを引っ張ると虹色に見えるという仕掛けが施されています。

 

では、なぜこのようなシャツを作ったのでしょう?

コンセプトムービーを見ると、その答えが分かります。

 

百戦練磨のオールブラックスでも、立ち向かえないものがあると言います。

 

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それは「差別」です。

 

見えない巨大な敵と戦うためには、

巨大なチームが必要であると選手は呼びかけます。

 

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黒は、すべての色を混ぜ合わせたときに出来あがる色。

そしてダイバーシティの象徴であるレインボーは、

個性を多様な色で表現しているのが特徴です。

 

今回AIGは、そんな二つの要素を掛け合わせることで、

ダイバーシティの重要性を世の中に伝えられないか?と考え、

引っ張ると虹色に見えるシャツを開発したという訳です。

 

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社会の空気を巧みに掴み、商品である

オールブラックスにしか言えない・できないこと

実現したこちらのキャンペーン。

 

やはり必然性が見えるキャンペーンは強いなと、改めて感じた次第です。

「どうして」「なぜ」を突き詰めることで、

世の中に響くキャンペーンを考えたいですね。

 

ちなみにシャツが当たるキャンペーンもやってるそうです。

(普通に欲しいです、これ…)

#DiversityIsStrength

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w.youtube.com

割引きされた上にいい気分にもなれる、スーパー大手TESCOが始めた人にも海にも優しいエコバッグ

  • Company: TESCO
  • Agency: Grey
  • Country: Malaysia

 

本日ご紹介するのは、マレーシアのTESCOから。

(なにげにマレーシアの事例紹介は、これが初めてです)

 

その名も…

「Unforgettable Bag」(忘れることの無いバッグ)です。

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世界では毎年、約1兆個のプラスチック袋が生産されているようです。

 

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そして、そのほとんどが

わずか一度使用されただけで廃棄されてしまいます。

 

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使い捨てられた袋は海に大量に浮遊し…

魚が喉に詰まらせたり、

亀がくらげと勘違いして飲み込んでしまったり、

クジラがプランクトンと一緒に吸い込んでしまうなど、

動物たちへのリスクが社会問題化していました。

 

そこで開発されたのが、この「Unforgettable Bag」です。

 

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このエコバッグを使ってスーパーに買い物に行くと、

尾っぽについたバーコードを読み込むだけで、

ディスカウントされる仕組みになっています。

とっても合理的ですよね。

 

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特にリスクを抱える代表的な海洋動物たちが

印刷されたエコバッグは、全3種類存在します。

 

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エコバッグが使用されるたびに、

海の浮遊ゴミがなくなっていく仕組みのようです。

(詳しくは不明ですが…)

 

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毎日使えば、海の平和が戻ってくる。

そんなエコフレンドリーな、エコバッグなのでした。 

 

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正直なところを言うと、

この手のアイデアというのはよくあるのですが、

デザインが優れている点や、スーパー大手のTESCOが始めた、

という点が個人的には特筆すべき点だと感じています。

 

イデアをスモールなままで終わらせず、

育ててムーブメント化していくことこそ、

これからのクリエイターの腕の見せ所かもしれませんね。

 

 

仮眠専用ホテルはクルマの中!? 睡眠グッズメーカーによる、世界初の車中ホテルがオープン

  • Company: Sleepdays
  • Agency: TBWA\HAKUHODO, Tokyo
  • Country: Japan

 

昨今日本では、長距離運転による過労によって、

引き起こされる事故が社会問題化しています。

 

そこに一石を投じるかもしれない、

睡眠グッズメーカー「Sleepdays」の試みを紹介したいと思います。

(※既にサービスは終了しているようです。)

 

その名も…

HOTEL HIGHWAY

 

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(おそらく)世界初の、

“仮眠専用の車中ホテル”です。

 

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 まずはスマホで、空いているパーキングをタッチして予約します。

 

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 指定された場所に駐車すると…

 

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ホテルのスタッフがやって来ました。

 

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白くパキっとした清潔なシーツを敷いたり、

枕はもちろん、アロマグッズまでセットしてくれます。

 

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あとは目隠しのカバーをして、準備完了。

 

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 狭い車内でも、ぐっすり眠れるサポートをしてくれるホテルなのです。

 

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ちなみにホテルではおなじみの

モーニングコールや、ルームサービスも提供してくれるようです。

ほんと至れり尽くせりですね。 

 

 

2017年の9/23にオープンして月末には終了しているので、

非常に短い期間のPR目的のサービスみたいですが、

とてもユニークで夢のあるキャンペーンだと思いました。

 

なにか物語の中に入り込んだような不思議な世界観も、

このサービスの魅力を引き立てていますね。

ぜひ本格的にサービス展開してくれるといいのですが…

という淡い期待を抱きつつ、記事を締めさせて頂きます。

 

※ちなみに昨日発表されたADFEST2018にて、

プロモーションカテゴリでシルバーを受賞したようです。 

 

hotel-highway.com

youtu.be

 

マクドナルドの"M"が期間限定で"W"に!国際女性デーに出現した、前代未聞の逆さ看板

  • Company: McDonald's
  • Agency: We Are Unlimited
  • Country: USA

*English follows Japanese.

 

前回に引き続き、

今回もマクドナルドの事例をご紹介したいと思います。

 

アメリカ・カリフォルニアにあるとある店舗。

おなじみの黄色い"M"字看板がなんと逆さになったというのです。

 

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ものすごい違和感、インパクトです。

 

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看板だけではなく、

逆さロゴのパッケージやユニフォームまで 作っちゃったようです。

(約100店舗で実施したとのこと)

 でも一体、なぜ?

 

実はこの日3月8日は”国際女性デー”で、

マクドナルド社は、女性を応援する企業であることをPRするために、

このようなことを行ったというのです。

 

ちなみに、当該店舗で働くウィリアムさんはシングルマザーの店長で、

二人の娘を抱えながらマクドナルドで働いているとのこと。

その様子はドキュメンタリームービーとして公開されたようです。

  

 

誰もが知っているマクドナルドの"M"字サイン。

その知名度を利用し、世界的な話題を作り出したこの事例は、

大衆の暗黙値(世論)をうまく利用した

PR型のコミュニケーションだと言えるでしょう。

 

なにより、ブランドの根幹に関わる大切なロゴマークを使って、

実行まで踏み切ったマクドナルド社の英断が素晴らしいと思いました。

 

McDonald's has flipped own logo for International Women's Day at California, USA. The brand is also rolling out limited time "W" packaging and crew shirts and hats across 100 U.S. locations. The move has sparked a lot of debate on social media.