IDEAFUL -ad from the world-

上海在住の広告クリエイターが、嫉妬に値する世界の広告やアイデアを長らく紹介し続けています。(2012年〜)

「Don't Do It. 」アメリカの人権問題無視にNoを突きつける、ナイキ社の勇気溢れる広告

  • Company: Nike
  • Agency: Wieden + Kennedy, Portland
  • Country: USA

 

「Just Do It」(ただ、やるだけ)のコピーで、

常にアスリートの背中を押し続けてきたNike社。

この度、アメリカで巻き起こる人種問題を受けて、

次のようなメッセージを発表しました。

 

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「For once, Don't Do It.」

(一度だけ言う、ただちに止めよ。)

 

行動をすることを促しつづてきたNike社が放った言葉は、

まさにJust Do It. の反対である、"行動を止めさせる言葉"でした。

映像の中では、シンプルな黒バックを背景に、

次のようにメッセージが語られています。

 

Don't pretend there's not a problem in America.

アメリカに問題がない振りするのは止めよう。

Don't turn your back on racism.

人種差別に背中を向けるのは止めよう。

Don't accept innocent lives being taken from us.

無実な命が奪われることを受け入れてはならない。

Don't make any more excuses.

もうこれ以上言い訳するのは止めよう。

Don't think this doesn't affect you.

私には関係がないなんて考えるのは止めよう。

Don't sit back and be silent.

ただ傍観して、押し黙るのは止めよう。

Don't think you can't be part of the change.

変化を起こすことなんてできないなんて考えるのは止めよう。

Let's all be part of the change.

さぁ一緒に、変化を起こそう。

 

「Don't Do It.」の意味は、文字通り「何もするな」と言うことではなく、

国の人権問題を「私には関係がない」と無視して、

行動に移すことのない傍観者たちを避難するためのものだったのです。

 

この巨大な差別をなくすために、その変化を起こすために、

一人ひとりが「Just Do It.」することの大切さを、

あえて逆の言葉を使うことで強く投げかけることに成功したと言えるでしょう。

 

ぜひ映像も合わせてご覧ください。

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タマネギ3倍でソーシャルディスタンスを推奨!バーガーキングの”悪臭”ワッパー登場

  • Company: Burger King
  • Agency: Wunderman Thompson, Italy
  • Country: Italy

 

コロナパンデミックが世界を揺るがす中で、

各企業がコミュニケーションのあり方を模索している昨今。

またもバーガーキングが一枚も二枚も上手な、

ユニークなキャンペーンをやってのけたようです。

 

イタリアのバーガーキングから、

ソーシャルディスタンシング・ワッパーが発売されました。

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もう説明いらずの明快なアイデアですよね。

ワッパーに挟まれているタマネギの量を3倍にしただけです。

それによって生み出される口臭から、人との距離を保とうという訳です。

 

なんともバーガーキングらしい、お茶目なアイデアでしょうか...

毎度毎度「その手があったか」と膝を打つようなキャンペーンを

仕掛けてくるバーガーキングが、

コロナ禍においても一人勝ちしているような印象です。

 

もちろんこのワッパーの登場は、

ネット上ではすぐに話題になっているようで、

PRは大成功と言ったところでしょうか。

 

社会の空気を巧みに掴みながら、

自社のブランドキャラクターをよく理解した上で

どんなコミュニケーションを仕掛けられるか。

そんな視点を持ってフレキシブルな

マーケティングをできているところは評価に値するでしょう。

 

エージェンシー側もただブリーフを待つのではなく、

先手先手で企業が思いつかなかったような

膝を打つアプローチを提案していくことで、

”広告以上”、”ブリーフ以上”のキャンペーンが仕掛けられるのかもしれません。

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同時期に行われた、バーガーキングの他事例も

ぜひ合わせて一緒にお読みください。

 

adfromtheworld.hatenablog.com

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クルマを、旅行先の一つに。デンマークのVW社による草の根キャンプ地開拓キャンペーン

  • Company: Volkswagen
  • Agency: Belong Agency
  • Country: Denmark

 

フォルクスワーゲン社のキャンピングカーは、

1960年代にRoad tripの象徴となった伝説的なクルマです。

目的地もなく、気の向くままにクルマを走らせる、

そんなライフスタイルが一世を風靡しました。

 

時代が変わって2019年のデンマークでは、

そんなライフスタイルに釘を刺すような法律が施行されました。

キャンプ場以外の場所でのキャンプ行為を全面禁止にしたのです。

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これでは自由の象徴であるキャンピングカーが、

不自由の象徴になってしまいます。

そこフォルクスワーゲン社はBelong Agencyとタッグを組んで、

自由を手に入れるためのキャンペーンをスタートしました。

 

具体的にしたことは極めてシンプル。

各地の土地のオーナーに交渉し、専用の停車スペースを確保したのです。

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California Staysと名付けられたこのスペースは、

旅行サイトでも公開され、わずか2週間で全てのスペースが予約されたようです。

 

一つ一つ土地のオーナーの許諾を取る作業は

大変骨が折れるものだったと想像されますが、クルマの持つ魅力を、

クルマを楽しむ場所を草の根的に開拓することで伝えることに成功した事例でした。

 


VW California California Stays

 

YouTubeのスクロールバーだけを使って車の機能を表現した、フォルクスワーゲンのTrueView広告

  • Company: Volkswagen
  • Agency: Almap BBDO, Sao Paulo
  • Country: Brazil

 

コロナの影響をうけて世界中の広告賞が取りやめになる中、

オンライン審査だけで進められたニューヨークフェスティバル。

その受賞作品が発表されました。

 

中でも著者の心を打ったのは、

ブラジルのVolkswagen社によるミニマル過ぎるTrueView広告でした。

 

何が凄いって、ほとんど制作費がかかってないのに、

キャッチーできちんと言いたいことも言えてるんです。

(*ちなみにSMALL BUDGET/BIG IDEAカテゴリーで金賞でした)

 

映像で使われているモチーフは、

なんとおなじみの動画の下にある”スクロールバー”だけです。

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そのスクロールバーの動きを車に見立てて、

様々な機能価値を訴求しているのです。

言葉だけだとわからないと思いますので、

ぜひ下の映像から実際の広告をご確認ください。

 

 

非常にミニマルながら、印象に残るこのTrueView。

とても秀逸だと思いました。

メディアのUIなどその特徴を掴んで、

見事にハックすることに成功した事例と言えるでしょう。

 

クリエーティブの受け皿となるメディアの特徴を

よく理解してるからこそ、生まれたクリエーティブなのではないでしょうか?

 

 

オンラインチャットの壁紙を自社の屋外広告に変えた、バーガーキングの秀逸すぎるSTAY HOMEプロモーション

  • Company: Burger King
  • Agency: DAVID, Buenos Aires
  • Country: USA

当ブログではSTAY HOMEに関連した

世界のアイデアを継続的にご紹介していますが、

あのBurger Kingが、世界中のクリエイターを嫉妬させる

素晴らしいアイデアを実現しました。

 

その名も「HOME OF THE BILLBOARDS」(家の中の屋外広告)です。

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STAY HOMEを徹底するがあまりに、人々が外出しないため、

せっかくの屋外広告が無駄になってしまっている一方、

Zoomのようなオンラインチャットが多用されることによって、

新たに人が集まる場所が生まれていると考えたBurger King。

 

オンラインチャットの背景を同社の広告にしてもらうことで、

屋内にいながら、屋外広告の役割を担わせられないか?と考え

キャンペーンをローンチしました。

 

参加ルールは極めてシンプル。

背景をダウンロードしてオンラインチャット上の壁紙として活用。

その様子を写真もしくはスクリーンショットして、

Twitter上にupするだけで"Buy 1, Get 1 Free"のクーポンが届きます。

 

 

たちまち、ソーシャルメディア上には

Burger Kingの屋内”屋外”広告が溢れ、多くの人が参加したようです。

 

 

これ以外にも世界中で、

様々なIDEAFULなコミュニケーションを仕掛けるBurger King。

世の中の動きを機敏にとらまえながら、

起点を効かせたリアルタイムなコミュニケーションの数々。

世界中のクリエイターが嫉妬しているのではないでしょうか?

次なる一手も楽しみに待ちたいと思います。

 

STAY HOMEのお供に。IKEA UKが名物のミートボールレシピを公開!

  • Company: IKEA
  • Country: United Kingdom

IKEAと言えば、世界中で数多くの

ユニークなアイデアを実践しているブランドですが、

このたびのコロナパンデミックを受けて、

IKEA UKがつぶやいた一つのTweetが話題になっています。

 

それがこちらです。

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国全体で”STAY HOME”を実践している最中にある英国で、

ストレスが溜まった人々に向けて、少しでも自宅生活を楽しむために

あの有名なミートボールのレシピを無料で公開したのです。

 

おなじみの組み立て家具の説明書のようなデザインで、

丁寧に書かれたミートボールのレシピ。

これさえあれば、誰でも自宅でIKEA気分を味わてしまうという訳です。

 

「STAY HOMEを実践することは簡単ではない。

しかし、私たちは人々の生活を少しだけ簡単に、楽しくできると信じている」

IKEA UKはリリース上でレシピを公開した意図について発言されています。

 

家の暮らしを豊かなのに、そして楽しむ空間にすることを支援し続けるIKEA

無料で公開したレシピには、そんなIKEAの企業精神を感じます。

パンデミックの最中に、ブランドとして何ができるのか?

非常時こそ、企業の本質が透けて見えるのではないかと思います。

 

家の外にはドラマのネタバレが!?ドイツの学生が考えた、秀逸過ぎるNetflixの仮想広告

  • Company: Netflix
  • Agency: Miami Ad School
  • Country: Germany

 

当ブログでは既に、コロナパンデミックの最中に生まれた、

世界の様々なコミュニケーション事例を紹介してきましたが、

今回ご紹介するのは、実際に実施されたものではありません。

 

ドイツのマイアミ広告学校に通う、

二人の学生が作ったNetflixの仮想広告になります。

しかし、本家のNetflixが最終的に声明を出すなど、

世界の広告クリエーティブ業界で

ちょっとしたバイラルが起きるほどの話題になっています。

 

何が一体そんなに凄いのでしょうか? 

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こちら、アイデアのキーとなる屋外広告の掲出イメージになります。

 

SPOILER:

Only two couplles say 'I do'.

And no, Kenny and Kelly aren't one of them.

 

ネタバレ:

ただ二つのカップルが「私はやる」そして「いいえ」と言う。

ケニーとケリーはそれらの一員では無い。

 

ドラマを見ていない人にはさっぱりの内容かと思いますが、

この広告、大切なドラマの筋書きをネタバレしちゃっているのです。

 

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他にも数々の人気ドラマのストーリーが暴かれていきました。

 

もしも大好きなドラマのネタバレ広告が

街中に溢れているとしたら…

確かに外出を控えて、家でドラマを見ることに

集中しようと思っちゃいませんか?

 

まさに嫉妬するほどの、Netflixファンのインサイトを鋭く突いた、

シンプルで強い、素晴らしいアイデアだと思いました。

 

ちなみにこの広告には、ティザーがあります。

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 SPOILER ALERT:

GATHERING SPACES

MIGHT CONTAIN THE ENDING

OF YOUR FAVOURITE SERIES.

 

ネタバレアラート:

人が集まる場所には、

あなたの大好きなドラマのエンディングが

掲出されているかもしれません。

 

ネタバレ広告が掲出される前に、事前にアラート広告を出し、

外出控えを促すと言う戦略になっていたわけです。

 

この素晴らし過ぎるアイデアを見た

世界中の広告・クリエーティブ関係者たちが、

次々とこの作品をシェアしていきました。

 

 

そして最終的には、本家のNetflixが登場する事態に。

 

 

学生の二人に対してアイデアは賞賛しつつも、

Netflixからは決してネタバレをすることはないと強調しました。

面白がって実際に広告として活用してくれれば、

さらにネットは盛り上がったでしょうが、ここでは大人の対応で、

華麗に交わして一連の盛り上がりは幕を閉じました。

  

↓こちらは同じく学生が作った、プレゼンテーションムービーになります。

わずか45秒程度ですが、非常によくまとまってるのであわせてご覧ください。

 

コロナ関連のコミュニケーションは割とシリアスなものが多かったり、

真面目なアプローチが多い中で、

こういったユーモア溢れるユニークな施策も、

ブランドによっては今後たくさん出てくるのかもしれません。

(不謹慎と思われるから方もいらっしゃるのもしれませんが・・・)

 

やはり毎日自粛ムードというのは心も体も疲れちゃいますし、

そういう点でも、筆者は個人的に大いにアリなアイデアだと思いました。